「まぁ、本当に!?凄いわ!!」 「監督生に任命されたのね!おめでとう、!」 「あ、ありがとうみんな・・・! まさか、監督生になれるなんて思ってもいなかったから・・・ 今、とても嬉しいわ!!」 ――――――――― ・・・当然よ、だってそうなるように仕向けたのだから。 偽りの笑みを貼り付け、心にもない言葉を口にして 感激したふりをして声を詰まらせ、誰にも聞こえないように、内心小さく呟いた。 ・・・けれども、後にして思えばこれが間違いだった。 監督生にさえ選ばれなければ・・・・・・・ ――――――――――――・・・と彼が、出会うことはなかったのに。 Step1:後悔 それぞれの寮から選抜された、監督生の顔合わせの日。 は同じ寮から選出された友人であり、そして忠実な部下でもあるエレンと共に 指定された教室へと足を運んでいた。 教室に足を踏み入れた途端。 キャーキャーと耳障りな、女共の矢鱈黄色い悲鳴が聞こえてきて は思わず眉を顰めそうになるのを、寸でのところで堪えた。 “成績優秀で誰にも分け隔てなく優しい・”は それこそ虫唾が走るような光景を目の前にしても、そんな顔をしてはいけないのだから。 聞いていたら、その内卒倒しかねない黄色い悲鳴の発生源は どうやら入り口から少し離れた位置に座っている、青年の周りかららしい。 ・・・彼も、同じ監督生なのだろうか? ふと横を見ると、エレンが“またか”と 声に出して言いたそうな呆れ顔をしていたので、こっそりと尋ねる。 「・・・エレン、“アレ”はなに?」 キャーキャーと、まるで発情期の雄猫のように甲高い声で喚く女共の間から 覗くようにして、チラリと黒い髪が揺れて見えた。 「あぁ、あれが“トム・リドル”よ。」 「トム・マールヴォロ・リドル?」 「ええ。」 「・・・名前だけは聞いたことがあるわ。そう、あれが有名な・・・。」 スリザリンの優等生。 名前は嫌というほど耳にしたことがあるけれど もう5年生になるというのに、“実物”を見たのはこれが初めてだ。 ・・・けれど、関わりを持たないにこしたことはない。 例え他人には、その辺りに転がっている石コロのようにくだらなくとも 自分にとっては輝く宝石のように重要なことがある。 それを成し遂げるための“戦力”は欲しいけれど、彼のような人間は信用に値しない。 ならば、関わるだけ無駄だというものだ。 “成績優秀で誰にも分け隔てなく優しく、おまけに顔も良い優等生” ・・・なんてレッテルを貼られた人間は、信用が置けないだけなのだから。 ――――――――――― ・・・そう、例えばわたしのように。 そんなことを思いながら、“ニオイ”に釣られて群がる馬鹿げた“群れ”を眺める。 すると、その“群れ”の合間を縫うようにして、ふと紅い瞳が視界に滑り込んできた。 瞬間、その紅が深みを増して。 彼と、の眼差しが交錯する。 ・・・ニヤリ、と紅い瞳が嘲笑ったかのように思えた。 あたしは本能的に、視線を逸らした。 何故だか、これ以上見ていてはいけないような気がしたのだ。 こっそりと。今度は気付かれないよう細心の注意を払いながら、もう1度彼を覗き見た。 もう彼は“群れ”に向けて人の良い笑顔を振り撒いている。 ・・・まるで、家畜に餌を与えているかのように。 ――――――――― ・・・修正、間違えたわ。 唐突に、そう思う。 それは、夜の明かりに群がる虫のように。 けれど明かりは、実は自らの意思で光り輝いて見せ、虫達を呼び寄せている。 そして明かりに近づき過ぎると・・・ そのあまりの熱量に、身を焼かれてしまう。 ジュと嫌な音がして、ポトリと落ちてそれきりだ。 けれど、彼と瞳が合っていたのは本当に一瞬のことで 彼と瞳が合って、あたしが瞳を逸らすまで。実際にはものの2、3秒ほどだったろう。 エレンの答えに、は“ふーん・・・”と関心なさそうに呟いて 彼から完全に視線を逸らした。 元々今日は顔合わせが目的だったのだ。 当然なんの問題もなく会議は終わり、寮の部屋に戻る途中の道で。 登り始めた階段が、エレンとを乗せたまま、向きを変え始めた。 周囲に他の人間がいないことをさっと確認して、階段の方向転換が終わる前に 隣にいるエレンに聞こえるか聞こえないかの声で呟く。 「―――――――――――― ・・・彼、ジャマだわ。」 「・・・トム・リドルのこと?」 随分不穏なことを口にしたのに、エレンは眉1つ動かさずにそう告げた。 まるで、当然のことを話しているように。 は言葉を続けることで、無言のうちにそれを肯定する。 「・・・そのうち、“処分”しなくてはいけないかもしれない。」 ガコン!と音をたてて、階段が次の道先を決めた。 「見たのは今日初めてだったけれど、あそこまで危険な人物だとは思わなかったわ。」 「―――――――――― ・・・そう、了解。」 エレンがそう答えを返すのが聞こえて、それを待ってから。 は再び歩を進める。 ・・・そう、これが。 階段なんかじゃなくて、自身が選び、自身が望んだ、自身の道。 けれど、違う場所で同時刻。 似たようなもう1つの会話が交わされていたことを、彼女は知らない。 今日は、新しく選任された監督生同士の顔合わせの日だった。 表面上だけの作り笑顔にはしゃぐ、クダラナイ女共に、 内心半ば呆れながら、そして内心半ば感心しながら。 仕方がないので、いつものように適当に相手をしてやっていた。 “温厚な性格で、勉学もスポーツもなんでもこなすスリザリンの優等生” ・・・であるトム・マールヴォロ・リドルは 人好きのする、女共が五月蝿く喚くような、そんな笑みを。 まるでそれしか知らないように、いつも浮かべていなくてはいけないのだから。 そのときも、部屋に入った途端群がってきた彼女達に嫌々。 もう何度も作り過ぎて、凝り固まってしまったような笑顔を振りまいていたのだが 人ゴミの向こうから、刺すような視線を感じて。 ・・・ふと、そちらへと顔を向けた。 人塵の間から垣間見えたのは、赤いネクタイをした1人の女子生徒。 ――――――――― ・・・グリフィンドール生。 彼女は、まるで疎むような。厄介なものを見てしまったような・・・。 そんな感情を奥深くに隠した瞳で、静かに僕を見つめていた。 常人なら気付かないだろう、奥深く深くに隠したその感情を読み取れたのは なんてことはない、僕が常人でないからだ。 僕も彼女と同じように、瞳の奥深くに“潜ませて”いるから。 不躾に投げ掛けられるそれは グリフィンドール生にはあまりにも不釣合いな、嫌悪の色を宿した眼差し。 向けられていたのは本当に一瞬のことだったが、僕はそれをはっきりと感じ取っていた。 だからこちらも、一瞬だけ“本性”を視線にのせる。 視線は瞳が合うか合わないかというところで、すぐさま逸らされた。 僕でなかったら、きっと彼女の瞳の奥底に隠されたものは見抜けなかっただろうし きっと彼女は、僕の瞳の奥底に隠されたものを見出しただろう。 出来るだけ他人に感情を悟らせまいとする 見事なまでの判断力と洞察力を見て、彼女に少しだけ興味が湧く。 あのタイミングで視線を外さなければ、僕は確実に。 優等生の仮面を貼り付けて、彼女に声をかけていただろうから。 そう考えれば、あれはとても的確な判断であったと言える。 脳内のデータベースを検索してみても、見覚えのないその姿。 けれども彼女の隣に、控えるように佇んでいる人物を・・・僕は確実に見たことがあった。 エレン・マクレイン。 グリフィンドール内外共に知名度の高い、ホグワーツの誇る優秀な生徒だ。 なかなか侮れない、核心スレスレのところをわざとらしく突いてくる女。 ・・・となると、彼女が付き従うようにしている女子生徒など、簡単に予測をつけることが出来た。 あの彼女が心から信頼し、言葉に耳を傾ける人物なんて、1人しかいない。 ・ 僕に負けず劣らない名声を持つ、グリフィンドールの優等生。 ・・・なるほど。噂は嫌というほど聞いたけれど、お目に掛かるのは初めての存在だ。 ・・・これは面白い掘り出し物を見つけたな。 馬鹿らしい会議に出席したことも、強ち無駄ではなかったかと、内心苦笑を漏らした。 会議終了後、寮への帰り道。 人気がない廊下に差し掛かったのを見計らって 後ろを付いて歩いてくる、数少ない忠実なシモベの1人に、ポツリと言葉を洩らす。 「――――――――――― ・・・彼女、ジャマだね。」 「・・・のことですか?」 すぐに何のことだか気付き、期待した通りの反応を返してくる友人に 僕は満足げな笑みを口元に浮かべる。 ただそれは、決してさっきまでのような笑みではないけれど。 それから少し考えたふりをして、僕は既に心に決めていた言葉を あたかも今、思いついたかのように口にした。 「・・・消すか、そうでなければこちらに“欲しい”な。」 言って彼は、血のように紅い瞳を冷たく細め、クスクスと笑った。 もう本当は、疾うに答えなんて決まっている。 狙った獲物は、絶対に逃さない。 ・・・それが彼の、信条だったから。 それこそどんな手段を使っても、必ずこの手中に収めてみせる。 ・・・狡猾な、蛇のように狙いを定めて・・・ |
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戯言。 ついに書き出してしまいました、ハリーポッター夢。 ページタイトルは正しく書くと 『君を見つけた今日という日を、僕はずっと忘れない。』 ・・・になります。狂は読んで字の通りで、非は欠点とかそういうのの非です。 これが後に、リドル君の非になるって意味を篭めてみたりしました。やっとかなきゃよかったよっていうね(笑) そして読んでわかるとは思いますが、ハリーというより寧ろリドルです! これはリドルさんの時代、50年前のお話なんですね。 なんだか、主人公も意味深発言ばかりで、わけがわからないです(汗) 戦力だの部下だの、書いてる本人もなにがなんなんだか。 黒同士の対決ですが、今後こんな2人がどうやって仲良くなるんでしょう・・・ (丸っきり他人事だな、おい。) ・・・最終的にはこの2人、バカップルになる予定なんですが(え、どうやって?) |
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